公開 2018年5月2日
更新日 2024年2月20日
小規模企業における社員の離職対策。
社員が辞めない会社を作る「メンタライジング」とは?
ある会社の経営者から
「会社の将来性が不安だと言って、社員が辞めた…」
「今年になって二人目だ…」
と相談されました。
社員の離職。どんな会社にとっても深刻なテーマです。
大企業であれば将来性があるのでしょうか?
かつては「銀行に就職すれば一生安泰」と言われた時代もありました。
そんな銀行でさえ、IT化が進んでいく中、いずれ活躍できる場所がなくなるのでは?という不安に駆られる時代です。
会社の規模に関わらず、将来が約束されている会社などないでしょう。
それでも一般的に、零細企業、小さな会社で働く社員の方が、将来への不安は大きいでしょう。
そして、その不安が離職へとつながってしまう一つの要因でしょう。
では「将来性に不安を感じて離職しようとする社員」を引き留めるには、どうしたらよいのでしょう?
大きな一つの要因が、働く者同士の『絆』を作ることです。
社員を理解すること!『絆』を作る『メンタライゼーション』
『メンタライゼーション』という聞き慣れない言葉があります。
『メンタライゼーション』とはmental(こころ)に由来する言葉で、「人を人として理解する能力」。心の機能です。
『メンタライゼーション』は、主にカウンセリングや心理学などの場面で用いられていました。
最近では、それらの領域を超えて、さまざまな場面で使われるようになりました。
『メンタライゼーション』の定義
メンタライゼーション(人を人として理解する能力)は、心身ともに健全な人間であれば誰もが持ち、自然に使えることのできる心の機能とされています。
そして、「メンタライゼーション」の機能を用いて、人が社会において円滑な人間関係のもと、生活を営むための実践を「メンタライジング」と呼びます。
メンタライジングの理論と実践においての第一人者ともいえる、J.G.アレン氏とP.フォナギー氏によると、メンタライジングは、以下の通りに定義されています。
- 心で相手の心を思うこと
- 自己や他者のメンタル状態について注意を向けること
- 誤解を理解しようとすること
- 自分自身をその外側から眺めること、他者をその内側から見つめること
- 精神的性質を付与すること、あるいは精神的に洗練させること
引用(Mentalizing in Clinical Practice,2008)
要するに、メンタライジングとは「まわりの人たちの行為を理解する」ことです。
では、このメンタライジングを、社員同士の『絆』が生まれる職場づくりに向けた、具体的な実践例に応用してみましょう。
- 失敗しても許される場づくりがされている
- 結果と同様にプロセスに対しても評価がされる
- 一人ひとりが「自ら気づき学び成長する」環境がある
- 家族に悪影響が出るまで仕事をさせない
- 一人ひとりの強みを理解して伸ばすような環境がある
- 一人ひとりの弱みをカバーするチームが存在している
- 一人ひとりにやるべき仕事が存在する
- 仕事のフィードバックが直接あり、自分で知ることができる
- 自分の仕事を、自分で創意工夫できる
このようにメンタライジングとは、大前提としてリーダーが部下一人ひとりの気持ちと行為、そして状況を理解することにより、初めて実践できるものなのです。
リーダーが一人ひとりを知ることで、メンタライジングの実践が確立され、明るく円滑な職場の中、部下が最大限の能力を発揮するようになっていきます。
さらには、リーダーに育てられた社員が他の社員をメンタライゼーションし、育てられるようになり、優秀な社員の育成が繰り返される仕組みができ上がっていくのです。
そうなれば、よもや離職率で頭を悩ませることもなくなるでしょう。
社員が育つ仕組みが社員同士の『絆』となる
メンタライゼーションは、相手の心を理解する能力です。
まわりの心を理解した上で、相手に合わせた対応ができるようになり、人を育てることができます。
この能力が組織で発揮できれば、どんなに小さな会社でも「将来性に不安を感じて離職する社員」を減らすことが出来ることでしょう。
なぜならば、人を育てることほど、やりがいのある仕事はないからです。
そして、人は、誰かに理解してもらうほど、相手を信用するようになります。
こうして作られた信頼関係によって、社員が安心できる職場ができるのです。
どんな会社に就職しても、将来の安定など約束されることはありません。
だからこそ、働く者同士の『絆』が大切なのです。